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トルタの国語 冒険の書 (2010年12月)

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小中高と通して、国語および現代文の授業は、およそ記憶していません。授業で聞いたことが自分が日本語を使うために「役に立った」と思ったことも、あいにくと一度もないのでした。ほんとうに申し訳なく思っています。
まったく授業を聞いていないのにテストの点だけはよく、ひねくれていて、いやな子どもだったと思います。もっとも高校の国語の先生方は、授業を聞いてもいない私をけっこう評価してくれ、いろいろと小説を貸してくれました。ふたたび、これらの先生が課外で貸してくれた本や、これらの先生に没収されたマンガについては深く記憶に残っていますが、授業をまったく覚えていないのは誠に申し訳ないとしかいいようがありません。
ただ、そのかわりと言っては何ですが、国語の教科書は最初から最後まで読み倒し、作者の写真への落書きやページの隅のパラパラマンガも含めて最大限に活用しました。小学校6年間を通しての私の習慣は、学年の最初の日に学校で国語の教科書をもらうと、数日間で全部読んでしまう、ということでした。授業中もずっと教科書を読んでいましたし(読んでいたものはかならずしも、今黒板の前で行われている授業の内容とは限りませんでしたが)、お気に入りの部分は何度もくりかえし読みました。教科書を読み倒していたのは、小学校の間は国語だけでなくほぼ全教科だったのですが、やがて授業中以外は開かない教科書が登場してくる中学校、高校のあいだも、国語の教科書だけは隅から隅まで読んでいました。
 
今考えると、当時(とくに小学校のころ)教科書は私にとって、世界に開かれた「冒険の書」であったのだと思います。国語の授業から何を学んだのかはさだかではないのですが、教科書による冒険によって、まだ見ぬ海にのりだし、多くのことを学んだのは間違いなくたしかなことです。
トルタによる国語の教科書「トルタの国語」の続編は、まさにそのような「冒険の書」を作りたい、と思いました。新しい教科書をもらったときの、新しい紙の匂いと、ページをめくってわくわくする感じ、そして一つ一つ章を「クリア」したときの達成感など、そういった感覚を受けることが、今現在の日常には、あいにくほとんどないのですが、そのような感じを読む人に与えられるような「国語の教科書」を作りたいと思いました。
(2010年11月25日、トルタブログ・河野聡子)
 
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読書を「旅」に例えるのはありふれたことだ。とはいえ教科書というメディアで「旅」ができるかどうかは、教科書の作り方や使用者の姿勢にかかっているだろう。たいていのこどもは冒険に憧れている。知らない場所へ行き、そこを支配するモンスターを征服し、好奇心を満たすこと。それを可能にする「国語の教科書」を作ることが課題だった。冒険をするには、状況の中でアクティブでなければならない。そこで1章から最終章まで、読者がさまざまな言葉に能動的に取り組めるような仕掛けを考えた。各コンテンツの最後に付与された練習問題は意外に難しいが、取り組んで損はしないモンスターたちである。
 
 
「トルタの国語 冒険の書」
2010年12月5日発行
発行部数 500
価格:1000円
責任編集 河野聡子
装丁 清水あすか
イラスト 小笠原鳥類
B5判、オフセット印刷156ページ、フルカラー表紙

■ゲスト執筆者
海埜今日子、大江麻衣、大崎清夏、小倉浩平、小笠原鳥類、カニエ・ナハ、黒川陽子、小峰慎也、佐藤雄一、清水あすか、橘上、なかにしけふこ、安川奈緒、八柳李花、山田竹志、山田航
■トルタ
河野聡子(企画・構成・制作)、佐次田哲、山田亮太、関口文子(サポートメンバー)
 
 
 

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