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トルタバトン(2011年~2012年)

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<トルタバトン>は、言葉と詩の未来を考えるヴァーバル・アート・ユニット「TOLTA」が2011年~2012年にかけて実施するプログラムです。本プロジェクトの参加者は、TOLTAが設置するスペース<トルタラボ>に1~5日間滞在し、滞在中「ひらくと飛ぶ本」というテーマで作品を制作することを求められます。制作された作品は、プロジェクトの最終段階で、TOLTAが発行する本「TOLTA 5」としてまとめられます。<トルタラボ>には、さまざまな参加者による「ひらくと飛ぶ本」制作のプロセスが蓄積されます。このプロセスはWEBやトルタラボ来訪者へ開示されます。

 

トルタはほぼ3年間ばかり「ひらくと飛ぶ本」を作りたいと思ってきました。しかしこの奇妙な課題は「ひらく」のは何か、「飛ぶ」のは何か、さらに「本」とは何かといった混乱した疑問をかかえることでもありました。疑問はいまだ完全には解消していませんが、こんな本を作りたいという望みを持ってから数年考え続けた結果、どうやればひらくか、どうやれば飛べるか、といったことについては、解答の気配が見えてきました。それが「トルタバトン」です。この企画をもって、最終的にトルタは「ひらくと飛ぶ本」をつくります。

 
ウェブサイト→トルタバトン

 

「トルタバトン」は2011年から2012年にかけて実施された。
基本的なプランは次のようなものである。

1.参加者は「トルタラボ」に24時間以上滞在し、
2.そこで「ひらくと飛ぶ本」を制作し、
3.次に同じように「ひらくと飛ぶ本」を作る人を紹介する。
4.以上を繰り返し、最終的にいろいろな人が作った「ひらくと飛ぶ本」をまとめて、ひとつの本にする。

 

このプロジェクトにはふたつの根っこがある。
ひとつは「TOLTA 2」を作ったころから河野がしつこく考えていた<「ひらくと飛ぶ本」を作りたい>という発想。もうひとつは、トルタラボという場所をもっと違う形で使えないか、ということだった。

 

トルタラボというスペースを作ったので、もっと有効活用できないか。作業場やミーティング、書斎としてトルタが便利に使うだけでなく、もっと開かれたやり方で何かできないか。トルタラボは木造アパートの一室で、大きなことはできない。この場所の印象はたとえば「遠くに住んでいる先輩の家に泊りに来たような感じ」というものだ。それはきっと、ここが外階段の古い木造アパートで、畳が敷いてあったりするからだ。懐かしいような、緊張するような、なじんだ場所と見知らぬ場所の中間にあるようなところ。ここで何をできないだろうか、何か面白いことが?

 

2010年10月にとあるイベントで、美術家・白川昌生氏と社会学者・毛利義孝氏の話を聞いた。テーマは「地方でアートをやること」についてで、その中で白川氏が、北九州で、大きな家に住んでいた美術家が、知人をそこに住まわせていて、ほとんどアート・イン・レジデンスのようなことをやっていた、という話をしていた、と思う。おぼろげにしか覚えていないのだが、話の眼目は「立派な施設がなくても作品は作れるし、自分の家を使ったっていい」ということだった。これを聞いてなるほどと思った。トルタラボもそういう風に使えるじゃないか。

 

よく「本」や「読書」は「旅」にたとえられる。日常と少し違う場所へ行って考える「本」は、ふだんみているのとは違って、飛ぶようなものになるかもしれない。そして色々な人がそこで考えたり、作ったりしたものがこの場所へ蓄積されていけば、それだけで何か「本」のようなものだってできるかもしれない。

 

こうやって場所を使うことと、<ひらくと飛ぶ本>が結びついて、「トルタバトン」というプロジェクトをはじめた。実際にトルタラボへの滞在制作を開始したのは2011年5月で、最後が2011年8月である。全部で31人の詩人、歌人、ミュージシャンなどが参加した。「ひらくと飛ぶ本」を作れという要請のもと、ひたすらオブジェを作り続ける人、24時間インターネットで喋りつづける人、30分おきにひたすら窓の写真を撮る人、絵を描いては部屋中に貼る人、散歩をして地図を作る人、ホットケーキを食べる人、石と話す人、等々、様々な行為が実行された。

 

この結果を「TOLTA 5」という本にして、さらにその本を持ってまわる「トルタバトンテン」を行ったが、それはまた次の話になる。

最後の参加者の滞在が2012年8月に終わった後、11月に中間報告として「トルタバトンマップ」を作成した。

 

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