ジャイアントフィールド・ジャイアントセンター (2010年2月6日)
「ジャイアントフィールド・ジャイアントセンター」は、首都大学東京現代詩センターが開催した「詩のいま、世界のいま」というイベントで行った、観客参加型のパフォーマンスである。このイベントの第1部では北川透、藤井貞和の講演が、第2部では北川透、藤井貞和、瀬尾育生、福間健二のトークセッションが行われた。
このパフォーマンスは<詩の歩行>と題され、観客全員に首都大学東京のキャンパスとその周辺を歩いてもらように構成した。コースを指定した地図と、そこを歩きながら答えを考える「質問」を渡す。だいたい以下のような手順で進められた。
1.100人の観客にタスクを与えていっせいに会場の外へ閉め出す。
2.渡された地図に従って観客が歩いていく中をパフォーマー(橘上、関口文子)が回遊する。
3.タスクを終えた観客が会場に戻ってくる。彼らは「詩とは何か」という問いに対する答えを携えている。
4.観客がカードに書いた答えをその場で構成して詩を作り、山田亮太が読み上げる。
詩のいま
歩行し、迷うこと/いつも、今日のようにはじめての場所を歩くこと/全てを書ききらずに共感を求めるもの/ことばであってことばでないもの/空白を読むもの/降ってくるもの/本来名指すべきでないもの/精神の自由、言葉の楽しみ、慰め/未生以前の十年/ことばでできた物質そして空気/ふるえながら歩行すること、それを快楽に転化すること/他人を楽しませようとすること/光/さんま/器/言葉のための言葉/わからないですといばっていえるのがいい点です/愛/あってもなくてもよいがつまずくとつきまとって離れないもの//プロセス/言葉を意味―無意味に還元せず「感じる」こと?/恥ずかしすぎてとてもいえない、人前では………/そもそもこの問いの成立する共通のものとは何だろう。これをまったく無視して、詩とは、生きている自分がもがいていることです/グループ行動のちょっと外。指示からはみだしたままくっついてくるもの/空と大地、またその間での営みと出会い/血/定義と言葉とのあいだに衝立のように(それにしても寒い気持ちよさ)/心を動かす力を持つもの/わからぬもの/言葉にならない言葉/詩(あくまで現代の詩)とは、自ら何物であるかを定義しないことで定義されうるものの可能性のことである/言葉の抽象に耐えること/Tにないもの。Tのなかに生まれるもの/この寒々とした外の光景のなかで詩ということばについて、考えられるもの、境地にいたるものごと/詩とは独りで書き独りで読む/美化されたハート/ひとりの場ではありませんでした/警察に駆け込むこと/詩とはディスコミュニケーションのコミュニケーションである。詩とは定義できない言葉の運動である。私にとって詩とは食事である/①ディスコミュニケーションのコミュニケーション②時空体③声/書くもの/ひとりごと/詩とは独りで書き独りで読む/美化されたハート/ひとりの場所から広場に出て戻ってくるもの――/食うや食わずでしたが、ある時までは、飯を食わせていただきました/そんな風にして考えていること/寒さの中の温かさ/野ざらしのひきこもり/対話のように独語し独語のように対話しながら他者とともに歩くこと/何でもない、何でもある/自らを生きる言葉である/分からない/答えの出ない問い/経験/歩行中の着想/経験もしくはよくわからないもの/何でもないもしくはクリアファイル/凍てつくような透明な空気の中を「詩」への答えを担わされた者たちがうようよぞろぞろとかなたこなたへ三々五々…。久々に来たこの大学の小ぎれいなキャンパス内の回廊を歩いてゆくとき、「担わされた」者たちはまるでラーゲリを移動させられる者たちのシルエットのようだった。植物の繁った小径の深みに入りかけたが、その「抒情的」空間とこのキャンパス―ラーゲリとどっちが「詩」か?/「詩はどこから来たのか、詩は何者なのか、詩はどこへ行くのか」という問いである/「人間」/残り少ない人生のオヤツ/人間存在体験のストップモーションであり、対存在の想像力に依存する/寒い中を寒いことを忘れる位、言葉に(みちびかれて)歩くこと(運動すること)/役に立たないものと思いきめて作れ/身体感覚/いまにも崩れそうな空/静かな個体の連続/ゆれ、それ自身で相手をゆらし、相手のひとみの中でゆれをつくること/自分の知らない風景の中にとつぜん迷い込むこと。曲がった先に何があるかわからないよ/戦わない言葉/さむさとたたかうことば/考えたら手がふるえた
第1部、2部の内容共に、下記のドキュメントPDFに記録がある。
「詩のいま、世界のいま」ドキュメント(PDF)
「詩のいま、世界のいま」
2010年2月6日
首都大学東京小ホール
講演&トークセッション 北川透、藤井貞和、瀬尾育生、福間健二
パフォーマンス TOLTA(河野聡子、山田亮太)関口文子、橘上
写真 吉原洋一